第15回宇都宮エスペール賞を受賞した彫刻家で宇都宮大共同教育学部非常勤講師の藤原彩人(ふじわらあやと)さん(益子町)の作品を紹介する展覧会「藤原彩人展 像化-構造を施す捻(ひね)り物」が18日まで、宇都宮美術館で開催されている。受賞に伴う成果発表展。2021年の受賞後、「3年間という時間を与えられ、実験と考察を重ねてきた」と新作などを展示している。
陶表現による彫刻家。幼い頃から親しんだ粘土を用い、一貫して「人物像」を手がける。ボウリングのピンのような人型に板や球体を組み合わせるなど、抽象と具象を行き来しながら、人とその環境、物質と空間、依存と対立など、さまざまな関係性を問いかけてきた。
「像化/台化-軸と周囲」シリーズは近年の代表作。色相で個性を与え、台座を単なる台ではなく作品と一体化することで、新たな様相を生み出した。「陶は一発勝負なので、そのトレーニング」というドローイング約250点、それを立体化したともいえる500点余の手びねりの彫像も圧巻。今展のために取り組んだ新作「像化-Planets on The Planet-01」と合わせ、作家の脳内をのぞきつつ、作品が形作られる過程を想像する楽しさがある。
01年度に創設されたエスペール賞は、宇都宮市ゆかりの芸術家を支援・育成することで芸術文化の振興を図ることが目的。選考委員長を務めた佐々木吉晴(ささきよしはる)館長は「藤原さんは陶の物性に着目し、時間や空間の関係性をより深く広げる表現に取り組んでいる」と評価、「大きな可能性がある」と期待を寄せている。
藤原さんは1975年京都府生まれ、益子町で育つ。東京芸術大大学院美術研究科彫刻専攻修了。