本県のレギュラーガソリンと軽油の価格が過去最高を更新した30日、県内のタクシーや運送関係者からは負担の高まりを懸念する声が相次いだ。燃料費の節約に取り組むが「価格の高騰に追い付かない」と危機感を募らせる。農機具の燃料などで影響を受ける農家は「手の打ちようがない」と嘆く。人手不足も重なり、経営を取り巻く環境は厳しさを増している。
「利益が出ず、今月いっぱいで廃業する社もある」
県タクシー協会の鉢村敏雄(はちむらとしお)専務理事(69)は声を落とした。加盟社が運用するタクシーの半数がガソリン車。電気自動車(EV)の導入やこまめなエンジン停止の呼びかけなど、各社が燃料費節約に取り組むが、価格高騰に追い付かない。
新型コロナウイルスによるダメージが抜けきらない中、業界の人手不足に拍車をかける可能性もある。鉢村専務理事は「公共交通機関としての責任を果たすためにも、運転手の賃金など労働条件の改善に取り組みたいが、燃料費高騰で十分に実行できるか心配だ」と胸の内を明かした。
芳賀通運(真岡市)では輸送トラックの燃料として、軽油を月間約7万リットル使用する。自社の給油所向けの仕入れ先は毎週入札を行うなど、コスト削減に取り組む。燃料費上昇分を運賃に反映させる「燃料サーチャージ」も導入し価格転嫁を図っているが、燃料代は前年より増加している。
燃料価格の値上がりを見込み予算編成したが、現在の価格は「予算ギリギリの数字。上がり続ければ、収支に影響する可能性はある」(担当者)と状況を注視する。「国や自治体からのより手厚い補助があればありがたい」と話した。
鹿沼市内でコメや麦などを生産する農業生産法人ワタナベの渡辺宏幸(わたなべひろゆき)社長(52)は、物価高騰が続く中での値上げに「ますます利益を出しづらくなるが、どうしようもない」と諦め気味に話す。
コンバインやトラクターなどの燃料で軽油を使う。コスト上昇に備えて生産量を増やしたいが、人手不足で実現が難しいという。国に対しては一時的な支援ではなく、経営力を上げるためにも「農家の課題を根本的に改善するために予算を使ってほしい」と願った。