泉匠さん

 益子町上大羽のギャラリー「もえぎ本店」で9~24日、個展「雪菌子製作所 コケシな収穫祭」を開く宇都宮市、木彫り作家泉匠(いずみたくみ)さん(46)。木の実や花などをモチーフに、木のぬくもりを生かした作品は、交流サイト(SNS)を中心に国内外のファンを持つ。目指すのは「こけしの復権」だといい、同展では「ザ・ミックスナッツシリーズ」など約50点を出品する。

 伝統的な東北こけしの面白さにひかれ、デザインの仕事を経て制作活動に入った。農民美術を提唱した山本鼎(やまもとかなえ)、那須の民芸品作家五十嵐(いがらし)豊(ゆたか)らの作品を参考に独学。山歩きとキノコが好きで、鉱物や小枝で作ったキノコをイベントで販売したのが始まりだ。

 作家としての本格的な出発点は2021年。県立美術館ミュージアムショップでキノコのほかミョウガ、ニンニクを擬人化した愛らしい木彫りの作品を発表。5種類ののみと平刀でひたすら掘り出す作品は、約50点を完売する人気だった。

 素材を生かし塗料も最小限。「1体仕上げたら、1週間手が動かなかった」というイタヤカエデなど硬く難しい木にも挑む。材料となる木の肌の美しさや質感に合わせたピーナツやマカダミアナッツ、より“木っぽさ”を意識した「花をあなたにシリーズ」など、発想のユニークさも光る。

 立ち姿が美しく奥深いこけしが自身の原点。「『とちぎコケシ』として魅力を伝えていければ」とその先を思い描いている。