東日本大震災から13年を迎えるのを前に、下野新聞「あなた発 とちぎ特命取材班」(あなとち)など読者とつながる報道に取り組む全国20の地方紙は、1月発生の能登半島地震の対応で、東日本大震災や熊本地震など「過去の教訓が生かされたと思うかどうか」を尋ねる合同アンケートを実施した。津波避難の呼びかけなどを評価する意見があった一方、避難環境などの改善を求める声も多く、受け止めは分かれた。

 アンケートは各紙が2月にLINE(ライン)や紙面などで呼びかけ、47都道府県と海外から計4681件の回答があった。

 教訓が「十分に生かされている」と答えた人は3・2%にとどまったが、「ある程度生かされている」と答えた人は35・6%で最多だった。栃木県は「十分に生かされている」が4・1%、「ある程度生かされている」が50・9%だった。

 石川県能登町の女性(64)は「全国からたくさんの救援物資や警察、消防の支援が届いた」という。「津波に対して避難や警戒をした人が多かったから」(小山市の女性53歳)など津波避難を理由に挙げる人が目立った。

 否定的な見方も多く、「あまり生かされていない」が21・2%、「生かされていない」は14・0%だった。栃木県は、「あまり生かされていない」が13・6%、「生かされていない」が11・2%と、全体よりもやや低い傾向がみられた。

 「いまだに避難所では床に雑魚寝し、仕切りや暖房設備の整っていない所がある」(金沢市の女性53歳)などと避難所の環境を挙げる声が多く、「能登では昨年5月にも地震があったのに、道路事情や原発などの危機を想定していたのか疑問」(宇都宮市の男性64歳)という指摘もあった。

 「どちらともいえない」と答えた人も23・3%と少なくない。栃木県でも17・2%と一定数を占めた。

 石川県小松市の男性(71)は「(能登)半島特有のアクセスの悪さがあり、復旧や復興が遅れている」と回答。「交通が不便な地域での災害に想像が及んでいなかった。SNS(交流サイト)での救助要請は経験が生きていた」(宇都宮市の女性52歳)などの理由が寄せられた。

 アンケートは東日本大震災10年を機に始めた協働企画「#311jp」の一環。多様な意見を聞き取るのが目的で、無作為抽出で民意を把握する世論調査とは異なる。

東京大大学院の関谷直也教授(災害社会学)の話

 救助や復旧、避難者の支援活動が相当に遅れた能登半島地震への対応に、教訓が生かされているとは思えない。特に被災地ではインフラが長期間戻らないことが分かった時点で広域避難が必要だったが、その決断も遅れた。

 被害者数などから、回答者は東日本大震災と比べて能登半島地震の被害を小さく見ているのではないか。過疎地で広域な地震被害は今後、他の地域でも起こりうる。今回の地震は決して軽い被害ではない。人口減少社会の大きな課題を浮き彫りにしたとも言える。

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 アンケートは以下の20紙が参加しました。 岩手日報、河北新報、秋田魁新報、福島民報、福島民友新聞、下野新聞、新潟日報、北陸中日新聞、福井新聞、信濃毎日新聞、静岡新聞、中日新聞、京都新聞、愛媛新聞、高知新聞、西日本新聞、熊本日日新聞、南日本新聞、琉球新報、日本農業新聞