【佐野】葛生東1丁目の吉澤記念美術館で収蔵企画展「のんびり南画さんぽ」の前期展が開かれている。春の季節が描かれた作品を中心に計62点が並ぶほか、作品の登場人物を切り出した紙を自分のアバター(分身)として絵にかざすことで、初心者も南画本来の楽しみ方を体験できる新しい試みも取り入れている。5月12日まで。
南画は中国の知識人の、都会から離れ、のんびりとした生活を送ることへの憧れを反映している。見る人が絵の登場人物に自己投影することで、自分だけの理想の世界を思い描いて楽しむことができる。
児玉果亭(こだまかてい)の「楳華書屋図(ばいかしょおくず)」は山や滝に囲まれ、たくさんの本がある屋敷で主人が過ごす様子を描く。美しい自然の中で本に読みふける、そんな画家の理想の暮らしが浮かび上がる作品となっている。
旧田沼町出身の岡田蘇水(おかだそすい)の「富士図(ふじず)」も見どころの一つ。横長に堂々と富士山が描かれた作品で、旧閑馬小に飾られていたものを同館で展示している。
同展では作品の登場人物を切り出した紙が置かれている。その紙を自分のアバターとして作品の前にかざし、より絵の中に入り込むことで「自己投影」したような感覚を楽しめる。
同館の末武(すえたけ)さとみ学芸員は「南画の世界の春に入り込んで、絵の中でもお花見を楽しんでもらいたい」と話す。5月25日~7月7日の後期展は内容を大幅に変えて開く予定。
午前9時半~午後5時。休館日は毎週月曜(29日、5月6日は開館)と、30日、5月7日。観覧料一般520円、大学生以下無料。(問)同館0283・86・2008。