「中等教育学校」という言葉を聞いても、「中高一貫教育」と混同してしまう人が大半かもしれません。1999年に制度化された「中等教育学校」は、中学から高校までの6年間を一つの学校で区切りなく学ぶ教育体制。「3年+3年」ではなく「6年」でこの時期を捉える意義とはなんなのか。県内で唯一この体制の学校を構えている「佐野日本大学中等教育学校」で、その魅力を教えていただきました。
「中等教育学校」と「併設型中高一貫教育」の大きな違いは、一般的な高等学校課程に入るタイミングにあります。前者は高校課程からの生徒募集はなく、後者はそのタイミングで新たに生徒を募集することが多いです。
このことにより中等教育学校では、一貫校といえども教育プログラムが「中学課程」「高校課程」に分断されることが多い中高一貫とは異なり、6年間をひとつの教育時期とみなして、継続し、積み重ね、基礎をしっかり身につけたあとに応用力を身につける「あと伸び」する子を育てる教育が可能となります。
「中学生から高校生にかけた6年間は、非常に多感な時期。机上の学習はもちろん、さまざまな体験・探求・行事などの要素と絡み合わせ、学力と共に人間としての力を積み上げていけるような教育プログラムを作っています。
例えばわかりやすい一例をあげると、英語教育。5年生時に全員で参加する『イギリス研修旅行』を大きな軸とし、そこへ向けたアウトプット重視の英語教育を1年生時から行っています。法で定められた規定の教科書の他にアウトプット力を徹底的に身につけるテキストを利用することで、5年生時のイギリスホームステイで活かせる英語を身につけていく。長いスパンで行事・体験・学習をらせん構造のように絡め合わせた教育を実現させています」と話してくれたのは、同校で生徒募集担当をされている大澤先生。
生徒にとっては学びを活かす行事・時期が明確なことで、学びにも熱がこもり、もちろんそれはその行事を越えた後も受験や人生に活かされるスキルとなります。 完全シームレスだからこそできる教育体系は、その「6年」という期間を最大限活かし、合理的で実践的なプログラムを実行できるようです。
佐野日本大学中等教育学校の最大の特徴といえば、「日本大学」の系列校であること。それはあらゆる角度から生徒にメリットをもたらします。
ここでは
① 日本大学への内部推薦
② 日本大学と連携した探究学習
③ 進路指導への早期取り組み
以上の3点に焦点をあてて、大学と連携した同校ならではの6年間を掘り下げてみましょう。
①「日本大学への内部推薦」は、その年によって増減はありますが、約40〜50%の生徒が選択します。日本大学と言えば、16学部86学科を有し、生徒のあらゆる希望を受け止める学部がある総合大学。近年同校は全国に26校ある付属高校のなかでも上位の成績を誇り、希望した生徒はほぼ100%第一志望の学部学科に進学しています。
また同時に残りの50〜60%の生徒は、日本大学以外の国公立や難関私立への進学を実現。内部推薦だけでなく、難関大学を目指す進学校としての役割も確実に果たしています。
②「日本大学と連携した探究学習」も大きな魅力のひとつ。1年生から4年生は縦割りでチームをつくり、各々で探究テーマを掲げ、それと関連する日本大学内の学部と連携をとって探究を深めていくことができます。大学で行うような学習方法を1年生から体感できることは、同校ならではの魅力と言えるでしょう。
③中等教育学校である同校には高校受験は存在せず、入学したら次の目標は「大学受験」です。そのため1年生(一般の中学の1年生)から、大学受験へ向けた進路指導がスタートします。②のような大学と連携した探究学習や大学と合同の企画(学部説明会など)を通して、「大学」というものが1年生の段階からリアルに意識の中に存在し、より具体的な将来のビジョンが見えやすい環境に身を置くことになります。
前期課程(一般の中学課程)からしっかり自分の将来を見据え、今に落とし込んで動き出すことができるからこそ、後期課程(一般の高校課程)で目標をより明確に定め、それに向けて真っ直ぐに進むことができるのです。
このような同校ならではの強みに関して、校長の舩渡川重幸先生は次のように語ります。

「やはり3年+3年ではなく、6年を通して大学受験を意識できるのが、中等教育学校の最大のメリット。加えて日本大学系列校であることは、生徒にとって早くから『大学』や『将来』を意識するのに恵まれた環境と言えます。通常の公立中学で1年生のころから大学受験が話題になることはほぼないだろうと想像すると、スタートの早さはやはり大きなアドバンテージです。
また、3年生の10月から一般的な高校課程の授業内容に入り、5年生が終わるときには英数国はほぼ学び終えてその後は大学受験のための学習に注力することになります。この英数国に関しては、単に一般の教科書を早くこなして進めているわけではなく、特別なテキストを使用。例えば数学では、より高度な項目を関連づけて一緒に学べる内容になっています。このような独自のテキストを使用し6年かけて大学受験へ挑むためのプログラムを組めるのも、当校の強みだと思っています」
教育目標に掲げられている「磨こう心、輝く知性、拓こう未来」という言葉。同校の生徒たちへの願いはここにぎゅっと込められています。
豊富な体験学習を通して、いろんな人に出会い、さまざまな考え方ものの見方に触れ、本物を見る。そのようなことを通して、「人生100年時代」をしなやかに生き抜く心を身につけてほしい。
探究や体験をただの経験に終わらせず、きちんと自分に落としこむためには基礎学力が大切。だからこそ、土台となる知性を身につけ、それをもとにあらゆる事象への興味関心を広げ応用する力を養い、深めてほしい。
このような「心」と「知性」を備え、それを自分の強みとして、自ら描く未来への扉を開き、羽ばたいてほしい。
「佐野日本大学中等教育学校では、夢や希望を持っている子、前向きな子を迎え入れ、支え、伸ばし、羽ばたかせるための環境を整えています。まだまだ『中学はひとまず公立へ…』という考えが多いとは思いますが、『中等教育学校』に入学することを検討できるのは小学6年生まで。ぜひ、私たちの学校を知っていただき、興味を持ってオープンキャンパス等に来ていただけたら、お子様の可能性をぐんと広げる大きな一歩を踏み出すきっかけになるのではないかと思います」と舩渡川校長と大澤先生は熱く語ってくださいました。
今回お話しを伺うために佐野日本大学中等教育学校を訪れた際印象的だったのは、出会った生徒たちがとても明るく楽しげで、前向きなオーラが溢れていたこと。それは学校が掲げている教育目標が理想論ではなく、生徒たちにしっかりと伝わり身についていることを裏付けるに十分なものでした。
6年間を完全にひとつの学校として学ぶことができる「中等教育学校」は、栃木県では「佐野日本大学中等教育学校」が唯一の存在。少しでも興味を持ったら、この特別な教育環境を体感できるオープンキャンパスに参加して、その魅力を親子で味わってみてはいかがでしょう。
※次回は同校の「グローバル教育」「探究学習」に関して、より深くお話を伺います。