下野新聞は栃木県の地元紙として、宇都宮美術館の開館前から、同館の作品収集などの開館準備の様子を広く紹介してきました。また、1997年の開館以降も、その展覧会情報をいち早く紙面で取り上げ続けています。
今回、同館で開催されている、開館25周年記念 全館コレクション展「これらの時間についての夢」展は、「時間」をテーマとしています。そこで、12月1日から15日まで、毎日1回ずつ、このページ内で、本紙の宇都宮美術館の記事を再度掲載し、同館の歩みを振り返ります。
これ夢展 担当学芸員の一言
現在もコレクションの中核の1つであるビゴー作品コレクション。1998年と2021年にこれらを活用した企画展が開催されました。今後も同コレクションの調査研究は継続していきます。
下記は1994年6月11日に掲載された記事です。

本県ゆかり 仏の風刺画家
ビゴー研究の拠点に
96年度開館の宇都宮市美術館
100点収集 プレ展覧会も
一九九六年度の開館に向け、宇都宮市立美術館の収蔵品の購入を進めている市文化の森公園推進室は、来春、日本人に題材を取った風刺画などで有名なフランス人画家ジョルジュ・ビゴーの作品を中心としたプレ展覧会を開く。これまでに集めたビゴー作品は百点近くになっており、最終的には二百点の収蔵を予定している。これだけまとまったビゴー作品を集めた美術館は全国的にも例がなく、開館後にはビゴー研究の拠点となりそうだ。
文化の森は、市制百周年の記念事業として、長岡町に建設を進めており、市美術館はその目玉。同推進室は、九三年度から九六年度にかけて二十四億円の予算を組んで収蔵品を購入する計画を立てている。九三年度は三億円で百九十点の作品を購入したが、半数の九十五点がビゴー作品で、そのうち二点が日光、一点が宇都宮を題材にしたもの。同推進室は美術館のテーマの一つに「地域と美術」を挙げており、このテーマの柱の一つになるのがビゴー。
ビゴーは一八六〇年、パリに生まれ、美術学校中退の後、新聞や雑誌の挿絵画家として活躍した。日清戦争をやゆした作品が日本の歴史教科書に掲載されるなど、風刺画家として親しまれている。報道画家としても日清戦争に従軍し活躍した。
ビゴーは、浮世絵に刺激されて一八八二年(明治十五年)に来日。日本人の生活の断面を切り取った作品を数多く残している。一八九九年(明治三十二年)に離日するまで、日光、宇都宮へも足を延ばした。
民家と母子の姿を描いた「上徳次郎村」など宇都宮に題材を取った作品もある。
同推進室が来週計画している「プレ展覧会」は、市民に開館前に収蔵品を知ってもらい、美術品に親しんでもらうのが狙い。来年二月ごろをめどに、十日から二週間の会期で油彩、水彩、デッサンなど約百点の作品を展示する。会場は市内の百貨店などで現在交渉中。開館までに少なくとも三回、このプレ展覧会を開く計画だ。
同推進室の大金敏彦担当は「市立美術館がビゴー研究の拠点となると思う。プレ展覧会では、多くの作品に触れて、美術館への関心を高めてほしい」と話している。