下野新聞は栃木県の地元紙として、宇都宮美術館の開館前から、同館の作品収集などの開館準備の様子を広く紹介してきました。また、1997年の開館以降も、その展覧会情報をいち早く紙面で取り上げ続けています。

 今回、同館で開催されている、開館25周年記念 全館コレクション展「これらの時間についての夢」展は、「時間」をテーマとしています。そこで、12月1日から15日まで、毎日1回ずつ、このページ内で、本紙の宇都宮美術館の記事を再度掲載し、同館の歩みを振り返ります。

これ夢展 担当学芸員の一言

価格面で大きな話題となった当館コレクションの看板作品《大家族》。しかし、金銭価値よりも、価値ある鑑賞を楽しんでもらえるような展示の工夫をしていきたいと思います。

 

下記は1996年6月20日掲載の記事です。

 

あの「大家族」9月にも公開

開館前の収蔵作品展で

 

 「大家族」って見てみたい―。価格論争が議論を呼んだ宇都宮美術館(仮称)=宇都宮市長岡町、来年三月オープン=に収蔵される絵画「大家族」(ルネ・マグリット作)が、早ければ九月にも市民に公開される可能性が出てきた。開館前の第四回収蔵作品展での公開に、同市が前向きの姿勢を示したもので、会場予定の同市の百貨店と警備や展示環境などについて、協議を進めている。

十九日の市議会総務常任委員会で、小林睦男市議の「高い、安いの議論があるが『実際見てみたい』との市民の声がある。開館前に公開しないのか」という質問に、有馬宏年市文化の森推進室長が答えた。

 公開が予定されるのは、九月下旬に計画中の「宇都宮美術館第四回収蔵作品展」(無料)で期間は一週間前後。これまで三回の収蔵作品展が行われ、第四回は当初の予定にはなかったが、オオタカ営巣の関係で開館が来春に延びたため、開催することになった。開館前の最後の収蔵作品展だ。

市文化の森推進室長は「公開は、価格論争の以前、作品購入時から計画してきたもの。内部でも議論はあったが、市民に早く見せよう、ということ」と説明。

 美術館の運営に当たる財団法人うつのみや文化の森は「不測の事態も予想され、開館前の公開にはあまり賛成できなかったが…。これだけ関心が集まると、あまり引っ張るのもどうかという結論になった」(谷新チーフ・キュレーター)としている。

 「大家族」は一連の収蔵作品の一部として公開される見込み。“高額”な作品だけに、保険や警備員の増加など過去三回より厳重な防犯対策が必要とされる。さらに温度や湿度、照明など展示環境にも細心の注意を払う必要があり、会場予定の上野百貨店と詰めを急いでいる。

 一方、価格問題はこの日の市議会運営委員会でも取り上げられ「議会ですでに購入を議決した話。質問するのは不適切」「その後の指摘があれば、確認するのが議会の務め」とのやり取りがあった。