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 県立宇都宮工業高校建築デザイン科の部活動「建築研究部研究班」は、「鹿沼組子」を建築用の「耐力壁」に応用する研究に取り組んできました。厚生労働省の2021年度「地域初!いいもの」に選ばれ、実用化へ大きく前進。先輩から引き継いできた成果が実り、部員たちは喜びにあふれます。

宇都宮工業高校建築デザイン科の部活動「建築研究部研究班」のメンバー。左上から五十嵐科長、大島 悠希(おおしま はるき)さん(1年生)、渡邉 慧翼(わたなべ けいすけ)さん(3年生)、左下から鈴木 信太(すずき しんた)さん(2年生)、酒主 阿季(さかぬし あき)さん(2年生)、八木沢 純平(やぎさわ じゅんぺい)さん(2年生)
宇都宮工業高校建築デザイン科の部活動「建築研究部研究班」のメンバー。左上から五十嵐科長、大島 悠希(おおしま はるき)さん(1年生)、渡邉 慧翼(わたなべ けいすけ)さん(3年生)、左下から鈴木 信太(すずき しんた)さん(2年生)、酒主 阿季(さかぬし あき)さん(2年生)、八木沢 純平(やぎさわ じゅんぺい)さん(2年生)

(企画・制作 下野新聞社営業局)

美しさと強度を 兼ね備えた壁材を

 「鹿沼組子」は鹿沼地方に伝わる伝統的な木工技術です。ヒノキ材や杉材を精緻な模様に組み付け、障子や欄間に使用します。建築デザイン科の五十嵐 忠彦(いがらし・ただひこ)科長は、前任校で教べんを執っていた時代に、ホテル関係者を通じて鹿沼組子の存在を知り、その見事さに魅せられたといいます。
 一般的な「鹿沼組子」は、デザインを重視した「意匠壁」の扱いで、強度を備えた壁材としての認識はありませんでした。「建築用の耐力壁に応用できれば、さらに用途が広がるのではないかと考えたのが始まりでした」と五十嵐科長は振り返ります。宇都宮工業高校に着任後、2015年から当時の生徒たちに「鹿沼組子耐力壁への挑戦」を提案。「建築研究部研究班」の研究テーマとして、代々の部員たちに引き継がれていきます。
 部員たちは試作を繰り返し、年に数回、県林業センターで強度の試験を重ねるなど地道な作業に取り組みました。この間、ユニークな研究が注目され、多彩な賞に輝いています。「歴代の生徒たちはみんな素晴らしかった。今でも交流が続いています。また、林業センターや建築関係の皆さんにも、大変支えていただきました」と五十嵐科長は感謝の言葉を語ります。

先輩たちの研究が今に生きています。上:栃木県子ども総合科学館の夏休みイベント時 下:一般住宅に「意匠壁」として採用されました
先輩たちの研究が今に生きています。上:栃木県子ども総合科学館の夏休みイベント時 下:一般住宅に「意匠壁」として採用されました
 

部活動で感じたものづくりの魅力

 現在、研究班のリーダーを務める2年生の鈴木 信太(すずき・しんた)さん(16)は「父が建築関係の仕事をしているので、なんらかの形で建築業に携わりたくてこの学校を選びました。もともと〝ものづくり〟が好きで、この部ならそれができると思いました」と入部の動機を語ります。「地域初!いいもの」に選ばれた時は1年生でしたが、「これまでの先輩たちが積み重ねてきた研究課題を引き継いでやってきて、その成果が出せてとてもうれしかったです」と喜びを語ります。
 部活の特徴は、みんなで取り組む大きなテーマとともに、自分で考え、設計・施工し、工程管理を行い、期日までに完成させる独自の取り組みにも挑戦できるところです。鈴木さんは自宅の部屋の形に合わせた本棚を制作しました。「何もないところから、地道な作業を続けて完成できた時は、大きな達成感があります」と、ものをつくる楽しさを語ります。将来は多くの人に喜んでもらえる家具の制作に携わりたいとの夢を持っています。

様々な取り組むテーマを自分たちで決め、自らが考えて設計や施工し工期管理も行います
様々な取り組むテーマを自分たちで決め、自らが考えて設計や施工し工期管理も行います
 

日光市内の店舗へ採用が決まる

 研究班が開発した「鹿沼組子耐力壁」は、公的試験研究機関の一般財団法人建材試験センター(埼玉県)で品質性能試験を実施し、性能が証明されました。研究に注目していた設計会社を通じて、鹿沼相互信用金庫の日光市内の新店舗への採用が決定。間もなく着工する予定で、大きな外壁を彩ることになりました。同橋本理事長は「地元企業と宇都宮工業高校とのコラボが実現して大変うれしい。完成した後には鹿沼組子をアピールするショールームとしても活用してほしい」と話しています。
 実用化の実現で「鹿沼組子耐力壁」の開発にはひと区切りがつきました。今後はその存在をさらに知ってもらう取り組みを進めていきます。また、新たな課題として、栃木県が有数の産地として知られる「しっくい」の研究にも挑戦します。「今後も地場産業との連携に力を入れていきたい」と五十嵐科長は話しています。

 

Profile

宇都宮工業高校建築デザイン科建築研究部研究班(宇都宮市)

部活動の建築研究部は「研究班」「コンペ班」「大工班」の3班で構成されています。「研究班」には7人が所属しています。毎日の放課後の時間のほか、土曜日を使って各自が定めたテーマの「ものづくり」に自主的に取り組んでいます。

宇都宮工業高校建築デザイン科建築研究部研究班 紹介動画
 
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